36協定は役員運転手も関係あり!罰則を受ける前に知っておくべき基礎知識

2021.10.21

「36協定」とは企業が従業員に時間外労働をさせる場合に必要な協定です。

 

もちろん役員運転手も一般社員と同様に協定を結ぶ必要があります。

 

しかし役員運転手は、時間外労働が多くなりがちな職種です。

そのため働き方改革で新たに定められた「時間外労働の上限規制」を超えてしまう場合もあるでしょう。

 

万が一上限規制を違反した場合は罰則を受ける可能性もあるため、なんらかの対策をする必要があります。

 

ここでは36協定の基礎知識と適用除外制度、役員運転手の仕事の改善方法についてご紹介します。

 

役員運転手の長時間労働で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

 

1. 36協定とは

 

本来時間外労働は必要最小限にとどめなければなりません。

しかしなかなか定時で帰すのは難しいという企業も多いでしょう。

 

従業員が時間外労働をする場合、企業は労働基準法36条に基づき、労使協定を結ぶ必要があります。

それが「36協定」と呼ばれるものです。

 

36協定を結ぶことで企業は、従業員の健康を損ねないよう十分注意したうえで、時間外労働をさせられるようになります。

 

 

゛第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。”

 

引用:労働基準法第三十六条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049#166

 

企業は36協定を結び、労働基準監督署へ書類の提出をして初めて従業員に時間外労働をさせられるようになります。

 

時間外労働とは、法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えた部分のことです。

 

法定労働時間を超える可能性がまったくない企業の場合、36協定を締結する必要はありません。

 

1-1. 働き方改革で36協定はどう変わったのか

 

2019年4月(中小企業は2020年4月)に働き方改革関連法が施行され、36協定でも「罰則付き時間外労働の上限規制」が導入されました。

 

<時間外労働の上限>

・1ヶ月45時間

・年間360時間

 

臨時的な特別の事情がない限り、この上限を超えて働かせることはできません。

もし違反した場合は、「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。

 

また違反した場合は、罰則を受けるだけでなく社会的信頼を失うことも考えられます。

 

企業側は時間外労働をしっかり管理し、上限を超えないようにしなければなりません。

では臨時的な特別の事情とはどういったものを指すのでしょうか?

 

1-2. 特別条項付き36協定

 

通常上限の決められている時間外労働ですが、臨時的な特別の事情がある場合のみ「特別条項付き36協定」を結べるようになります。

 

「臨時的な特別の事情」とは、具体的にいうと以下のような例が挙げられます。

 

・急な納期変更による業務のひっ迫

・予期しない機械のトラブル対応

 

こういった場合は「特別条項付き36協定」が結べるものの、際限なくいくらでも働けるわけではありません。

この場合も厳しい規定が定められています。

 

 

特別条項付き36協定の規定

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 休日労働を含んで2~6か月平均80時間以内
  • 休日労働を含んで月100時間未満
  • 月に45時間を超えて時間外労働できるのは、年間6ヶ月のみ

 

事業主はこれらが適切に守られているか把握し、守られていなければ是正する必要があります。

 

2. 役員運転手も36協定が必要

 

企業内でも特殊な業務を行っている役員運転手ですが、雇用されていることに変わりはなく36協定を結ぶ必要があります。

 

ただ役員運転手は担当する役員が多忙な場合はとくに、時間外労働や休日出勤が多くなりがちな職種です。

そのため時間外労働の上限を守れるかどうかがポイントとなります。

 

1ヶ月45時間の時間外労働とは、月20日勤務したとして1日2時間程度。

通常17時までの勤務とすると、19時には退社しなければなりません。

 

役員が夜間、頻繁に接待で食事をするとなると上限をオーバーしてしまう可能性が高くなります。

 

なんらかの対策を検討する必要があるでしょう。

 

場合によっては適用除外制度を活用できるかもしれません。

 

2-1. 36協定が適用除外できる可能性も

 

役員運転手はメインの業務が役員の送迎です。

担当する役員が社内や訪問先で業務を行っている間の多くは、待機時間になります。

 

長時間勤務で待機時間も長くなるような職種は、労働基準法第四十一条の「断続的労働に従事する者」に当てはまる可能性があります。

 

断続的労働と認められるためには、以下のすべてを満たしていなければなりません。

 

・待機時間(手待時間)が実作業以上

・実作業が間欠的

・実作業の合計が8時間まで

 

これらを満たしたうえで、労働基準監督署に書類の提出をします。

 

ただし必ずしも認められるとは限りません。

 

もし認められた場合、該当の役員運転手は「労働時間」「休憩」「休日」の規定が適用されなくなります。

つまり時間外労働という概念もなくなるのです。

 

3. 働き方改革で考える役員運転手の仕事のあり方

 

「働き方改革」の目的は、「1億総活躍社会の実現」です。

 

働き方改革では多様な働き方を選択できることや、賃金格差をなくすことなどを目標として盛り込んでいます。

その一環として時間外労働に上限が定められました。

 

つまり働きすぎを防ぎ、多様で柔軟な働き方ができるようにしようとするものです。

 

時間外労働を減らすためには管理職の方々が意識を改め、業務の根本的な見直しを行う必要があります。

 

では役員運転手に関しては、どのように仕事を変えていけばよいでしょうか?

たとえば以下のようなことが考えられます。

 

・担当する役員の業務改善

・役員運転手の人員を増やす

・時間外は派遣やパートのドライバーを雇う

 

3-1. 担当する役員の業務改善

 

多くの役員は、36協定の対象外です。

そのため時間外労働という概念がありません。

 

しかし長時間労働することによっておきる健康面やプライベートに関する弊害は、役員も変わりはありません。

 

役員自体の業務改善を考えてみることも対策の1つです。

 

役員の労働時間が減ることで、担当している役員運転手の労働時間も減少するでしょう。

 

3-2. 役員運転手の人員を増やす

 

働き方改革で言われている「多様な働き方」を実践する方法です。

 

役員運転手の人数を増やし、個々にかかる負担を減らします。

 

たとえば今まで2人体制で担当していたところを、3人体制にするといった方法です。

 

3-3. 時間外は役員運転手の派遣会社に依頼する

 

現在雇用している役員運転手は定時もしくは上限を超えない程度に勤務し、夜間の会合や休日出勤がある日はそれ以降の時間を派遣の役員運転手に依頼する方法です。

 

当日急な依頼を受けてもらうのは難しいですが、数日前から分かっているような場合は、スポットで依頼するとよいでしょう。

 

ただしスポット契約を受け付けていない派遣会社もあるため、事前の確認が必要です。

 

都内であれば「セントラルサービス」が、スポット契約を受け付けています。

4時間までの短時間だけの依頼も受けてもらえるため、費用を抑えることもできます。

 

4. まとめ

 

「36協定」とは、従業員に時間外労働をさせるために必要な労使協定です。

 

働き方改革関連法が施行され、現在は時間外労働の上限を「1ヶ月45時間・年間360時間」と定められています。

 

もしもこの上限を超えてしまった場合、罰則を受ける可能性もあるため、雇用主側は個々の労働時間をしっかり管理しなければなりません。

 

もちろん役員運転手も36協定の適用対象となります。

ただし拘束時間が長く、手待時間(待機時間)も長いという仕事の特性上、36協定の適用除外に当たる場合もあります。

 

いずれにしても雇用側は従業員の健康を損ねない範囲に時間外労働をとどめられるよう、働き方を改善することも考えていきましょう。