役員運転手が「断続的労働の適用除外制度」に申請する条件と方法とは?

2021.10.06

断続的労働とは、本来の業務が短時間で手待ち時間(待機時間)が長くある仕事のことを言います。

 

役員運転手は手待ち時間(待機時間)が長く断続的労働になりがちです。

 

さらに企業によっては役員のスケジュールに合わせて残業や休日出勤があり、時間外労働が長くなります。

 

36協定では時間外労働の罰則付き上限が定められ、対応に苦慮している雇用主の方も多いのではないでしょうか?

 

その問題を解決できる可能性があるのが「断続的労働の適用除外制度」です。

 

ここでは役員運転手の「断続的労働の適用除外制度」を申請する場合の条件や方法をご紹介します。

 

1. 断続的労働の定義とは

 

断続的労働」とは、本来の業務が短時間だけで継続されず、手待ち時間(待機時間)が長い労働のことをいいます。

 

たとえばマンションの管理人や隔日で勤務するビルの警備員、社員寮の寮母などです。

 

本来は36協定で時間外労働の時間の上限が決められています。

しかし断続的労働を行う業務の場合、労働基準監督署から許可を得られていれば時間外労働の概念がなくなります。

 

それが「断続的労働の適用除外制度」です。

 

許可を得るためには、条件をすべてクリアする必要があります。

 

まずは36協定について理解し、本当に「断続的労働の適用除外制度」を申請すべきなのかを確認してみましょう。

 

2. 時間外労働をするなら36協定が必須

2. 時間外労働をするなら36協定が必須

「働き方改革」という言葉を聞いたことがあるでしょう。

「働き方改革」とは長時間労働を改善し、誰もが働きやすい社会を作ることが目的とされています。

 

これにより2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)から、時間外労働に罰則付きの上限が決められました。

 

長時間労働が、「少子化」「女性がキャリア生計しにくい」「男性が家庭参加しにくい」といったことの原因になっており、それらを解消するためです。

 

労働時間は労働基準法で1日8時間・1週間40時間以内(法定労働時間)と決められています。

 

もしもこの時間を超えて労働する場合には、36協定を締結し労働基準監督署への提出が必要です。

 

2-1. 時間外労働の上限

 

今回決められた時間外労働の上限は月45時間・年360時間

この時間を超えて時間外労働した場合罰則が適用されます。

 

 

【罰則:6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金】

 

ただし「臨時的な特別な事情」がある場合のみ、以下を遵守できる範囲で働けます。

 

・年720時間

・複数月の平均が80時間以内

・月100時間未満

・45時間を超えられるのは年間6ヶ月まで

 

臨時的な特別な事情とは、

 

❝通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合❞

引用:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

のことで、具体的には決算・ボーナス・納期のひっ迫などがあります。

 

しかし役員運転手は、担当する役員の夜の会合や接待ゴルフなど、時間外労働が非常に多い職種です。

 

そのため「臨時的な特別な事情」と関係なく、36協定で定められた上限を超えてしまう可能性があります。

 

その場合の対策が「断続的労働の適用除外制度」です。

 

3. 断続的労働の適用除外制度

 

断続的労働の適用除外制度」で労働基準監督署の許可を受けた場合、「労働時間」「休憩」「休日」の概念がなくなります。

 

つまり何時間働いても問題はなく、休日も取る義務もないということです。

 

これは断続的労働が、精神的・身体的に負担が重くないため、健康上は問題ないという判断からきています。

そのため待機中でも精神的に緊張状態が継続する場合や、身体疲労がある場合は断続的労働とみなされません。

 

断続的労働とみなされた場合でも、非常識な過重労働は健康面での問題が生じる可能性があるため注意が必要です。

 

給与面では「法定労働時間」の概念がなくなるため、時間外手当や休日出勤手当を支払う必要がなくなります。

 

ただし深夜勤務(午後10時~午前5時まで)をした場合のみ、深夜労働手当を支払う義務が生じます。

 

3-1. 役員運転手は断続的労働に当てはまるか?

 

役員運転手には必ず「手待ち時間(待機時間)」があります。

 

企業によってその時間はまちまちですが、この「待機時間」は「休憩時間」ではなく「労働時間」の扱いになります。

 

残業代や時間外を支払ううえに待機時間にまで給与を払うのは、無駄な出費だと感じる雇用主もいるでしょう。

 

役員運転手の待機時間が長い場合「断続的労働の適用除外制度」が認められるかもしれません。

 

「断続的労働の適用除外制度」に申請するための条件を確認してみましょう。

 

3-2. 役員運転手が「断続的労働の適用除外制度」を申請する条件

 

雇用主としては非常にメリットのある「断続的労働の適用除外制度」ですが、すべての役員運転手が利用できるわけではありません。

 

以下の条件に当てはまっているかをまず確認しましょう。

 

《断続的労働の適用除外制度の条件》

・実作業が間欠的で、待機時間が長い

・待機時間が実作業の時間を上回っている

・実作業の時間合計が8時間を超えない

 

たとえば日常的に役員運転手と別の業務を兼任していたり、他部署の手伝いをすることがあったりする場合には、条件を満たしていないことになります。

 

これらの条件が当てはまった場合、労働基準監督署に書類の提出をします。

 

提出書類は「適用除外許可申請書」と「該当する労働者の日報など具体的な稼働実績が分かるもの」です。

一般的に審査はこれらの書類だけでなく、実態調査もあわせて行われます。

 

4. 断続的労働にならない役員運転手の雇用方法

 

断続的労働の適用除外制度は非常に判断が難しいものです。

当てはまると思っても、労働基準監督署から認められないこともあります。

 

断続的労働に問題を感じるようであれば、役員運転手の雇用方法を見直してみるのもおすすめです。

場合によっては、役員運転手の人数を増やすことも選択肢の1つです。

 

役員運転手の稼働状況別に、対策を考えてみましょう。

 

4-1. 行く場所や時間が決まっている場合

4-1. 行く場所や時間が決まっている場合

行く場所や時間が決まっているのであれば、以下のような方法があります。

 

基本役員の会社と自宅との往復のためだけに役員運転手を雇用している場合は、パートタイムや派遣の役員運転手に切り替えて、朝晩のみ出社してもらうようにします。

 

待機時間の労働力を無駄にすることがありません。

 

また週に数回取引先に行くことがある場合は、その日だけスポットで派遣の役員運転手に依頼するとコストを抑えられます。

 

4-2. 時間外が多い場合

 

普段から夜間や休日など時間外の勤務が多いようであれば、そのときだけ派遣の役員運転手に依頼する方法を検討しましょう。

 

役員運転手を派遣会社に依頼する場合の注意点は、スポット契約があるかどうかを確認することです。

派遣会社の中には月極契約しかできない会社もあります。

 

スポット契約ができて、さらに短時間から依頼できるような会社が理想です。

都内の派遣会社であれば「セントラルサービス」がスポット契約を扱っており、さらに研修体制も整っているためおすすめです。

5. まとめ

 

断続的労働とは、本来の業務の間に手待ち時間(待機時間)が長時間伴うような労働をいいます。

 

役員運転手もいつでも運転できるよう待機している時間があり、場合によっては断続的労働と認められるでしょう。

 

「労働時間」「休憩」「休日」の概念がなくなる「断続的労働の適用除外制度」は、長時間労働が常態化している場合に有効な方法です。

 

ただしさまざまな条件を満たしている必要があるため、必ずしも労働基準監督署から許可が下りるとは限りません。

 

役員運転手の心身の管理も重要になるため、別の方法もあることをふまえて検討しましょう。