役員運転手の労務管理は悩みの種!?その原因と解決法

2021.10.21

役員運転手は多忙な役員を目的地まで送迎する仕事の特性上、時間外労働や休日出勤が多くなる傾向にあります。

 

これにより以下のような問題の起こる可能性があります。

 

・36協定を守れない

・健康を損なう可能性がある

・離職率が上がる

 

多忙な役員が、無理な運転を求めるといったモラハラやパワハラが起こることも考えられるでしょう。

 

これらのことは労務管理にとって改善すべき問題です。

 

ここでは役員運転手の労務管理に関わる問題点と、その解決策をご紹介します。

 

役員運転手の労務管理で悩んでいる労務部や総務部ご担当の方はぜひ参考にしてみてください。

 

1. 労務管理とは

 

労務部や総務部では従業員の「労働環境」「労働条件」「福利厚生」などを管理しています。

これらを総称して「労務管理」といいます。

 

従業員が毎月正しい給与を受け取り、しっかり休みをとれるのは、「労務管理」がしっかりと行われているからです。

 

具体的には従業員の「勤務時間」「有給休暇」「休憩時間」などが適切かどうかをチェックすることや、「給与計算」「安全衛生管理」などが業務の一環となります。

 

2. 役員運転手における労務管理の問題点

 

では役員運転手の労務管理ではどのような問題点が出やすいのでしょうか?

 

役員運転手の働く環境として、「社会的に影響力があり、自分より立場が上の方を担当する」という特徴があります。

この労働環境によって、問題が発生しやすくなります。

 

2-1. 長時間労働

 

役員運転手が担当する役員の中には、夜間の会合や休日の取引先との接待ゴルフなど、非常に忙しく働いている方が多くいらっしゃいます。

 

そうなると役員に同行するため、役員運転手も時間外労働や休日出勤をすることになるでしょう。

 

「長時間労働」が続くと、さまざまな問題の起こる可能性があります。

 

(長時間労働の問題点)

・ドライバーの健康が損なわれる

・離職率が上がる

・疲れで注意力散漫になり、事故の危険が高まる

 

役員運転手の労働環境を変えることは、ドライバーのみならず役員の身を守る観点からも重要なことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

2-2. 公私のバランス

 

長時間労働が常態化することで、役員運転手の公私のバランスは崩れてしまいます。

 

代わりがいないことで有給休暇の取得もままならない、休みたいときに休めないといった問題点が考えられます。

 

プライベートを削って働かなければならないことを非常にストレスに感じる役員運転手もいるでしょう。

 

近年仕事と生活のバランスをとって働く「ワークライフバランス」が非常に注目されています。

国としても「ワークライフバランス」を重視しており、企業としては改善する必要がありそうです。

 

2-3. ハラスメント

 

2020年6月(中小企業は2022年4月)よりパワハラ防止法が施行されました。

 

職場でのパワハラやモラハラといったハラスメントの対策をするのも、労務管理の仕事です。

罰則規定はないものの、場合によっては「指導」「勧告」を受ける可能性もあるため注意が必要です。

 

自分より立場が上の方を担当する役員運転手の特性上、どうしてもハラスメントの問題は浮上します。

 

役員が「指導」と思って注意したことでも、ドライバーにとっては「パワハラ」であると感じる可能性は十分にあります。

 

多忙なあまり次の予定に間に合わず、急ぐようにと役員が無理難題を言ってしまい、結果「モラハラ」につながるケースもあるかもしれません。

 

「指導」や「勧告」を受けないためにも、社内全体でハラスメントに関する知識をもつことが最短の改善方法です。

 

3. 役員運転手の労務管理と36協定の関係

労務管理に関連する法律は、「労働組合法」「男女雇用機会均等法」「最低賃金法」など数多くあります。

その中でも役員運転手の労働に関して、とくに注目したい法律が「労働基準法」です。

 

中でも36協定は役員運転手を雇用する会社にとって、頭の痛い問題でもあります。

 

2019年4月(中小企業は2020年4月)から、36協定で定められている時間外労働に、「1ヶ月45時間・年間360時間」と罰則付きの上限が設けられました。

 

臨時的な特別の事情がない限りはこの上限を超えられず、長時間労働が常態化している役員運転手のいる企業は対策が求められます。

 

3-1. 断続的労働による適用除外制度

 

とはいえ役員運転手のような本来の業務を継続的に行わず待機時間が長くなる「断続的労働」は、36協定の適用除外制度の対象になる可能性があります。

 

これは一定の条件を満たしていれば、「労働時間」「休憩」「休日」の規定が適用されなくなる制度です。

 

(適用除外制度の条件)

・実作業が間接的である

・手間時間(待機時間)が実作業時間より長い

・実作業時間の合計が1日8時間を超えない

 

これらすべてを満たした上で、労働基準監督署から許可が得られれば適用除外できるようになります。

 

4. 役員運転手の働き方改善方法

 

役員運転手の労務管理で見つかる問題点の中でも、迅速に改善すべき点は「労働時間」です。

 

この問題点を改善しなければ、罰則を受ける可能性もあります。

 

そうなってしまっては金銭面だけでなく、会社のイメージに関わる大問題にもなりかねないため、早急に改善が必要です。

 

役員運転手の働き方をどう改めればよいか考えてみましょう。

 

4-1. 2人体制にする

 

ドライバー1人にかかる労働時間を短縮させる方法です。

 

現在の役員ドライバーが正社員であれば、時間外になる部分だけパートを1人雇用します。

時間外労働の部分を根本的になくしてしまえば、長時間労働から脱却できるはずです。

 

休日出勤を減らすために、そのときだけ派遣の役員運転手を雇用する方法も考えられます。

 

役員運転手の派遣会社では、1日や数時間だけ依頼できるスポット契約を行っている会社があります。

数日前までに依頼しなければなりませんが、それだけでもドライバーにかかる負担は減るでしょう。

 

都内でスポット契約ができる派遣・請負会社には「セントラルサービス」があります。

非常に研修が充実しており、スキルのあるドライバーを派遣してもらえると定評のある会社です。

 

もちろん雇用人数を増やすことで賃金の負担は増えてしまいます。

しかし法を犯さないためには仕方がない出費だと割り切って考えましょう。

 

4-2. 派遣の役員運転手を雇用する

 

もう一つの方法は、派遣の役員運転手を雇用する方法です。

 

自社雇用の場合役員運転手に急な休みが必要になると、代わりのドライバーがおらず困ってしまいます。

しかし派遣であれば代わりのドライバーを派遣してもらえるため、役員の業務に穴を開けることはありません。

 

派遣ドライバーの場合、内容によって労務管理が派遣先企業・派遣元企業で分かれています。

 

派遣先企業では休憩や遅刻などの「就業時間」と、「時間外労働」「休日出勤」について管理します。

 

時間外労働が発生する場合はあらかじめ派遣元企業へその旨を伝え、対応方法について確認しましょう。

 

5. まとめ

 

役員運転手は仕事の特性上、長時間労働になりやすい職種です。

またハラスメントの問題もあります。

 

労務管理をする上で、これらを改善する必要があります。

 

ハラスメントが起きている場合は、該当者に認識の改善を求めなければなりません。

 

労働時間に関しては、36協定に遵守した働き方にできるよう「役員運転手を増員する」ことや、「雇用形態を変更する」ことも検討が必要です。

場合によっては36協定を除外される「断続的労働の適用除外制度」が活用できることもあります。

 

いずれにしても役員運転手が、日々安全な運行ができるよう対応しましょう。